粒界・界面・表面などに配置した機能元素の特性を明らかにし、材料設計へと展開させるためには、サブナノスケールまで立ち入った原子構造に関する知見、その原子構造から予想される電子状態に関する情報を包括的に理解することが必要となる。これら構造解析、理論研究は、独自の研究フィールドを構成してきたが、既存研究の延長では機能元素の包括的理論の構築は困難である。そのためには、最新鋭の構造解析・理論手法と機能元素が特性の起源となる材料研究を綿密に連携させ、材料設計へのフィードバックを効果的に行わなければならない。従って,本領域の研究目標を達成するために、以下の計画研究を設置する。 
 
 
研究項目A01 機能元素の原子構造・電子状態解析
 
ア 機能元素超構造解析          
研究代表者       幾原 雄一・東京大学・教授
研究分担者       溝口 照康・東京大学・助教
                 柴田 直哉・東京大学・助教
                 阿部 英司・東京大学・准教授
 
機能元素の局所原子構造及び電子状態の実験的解析手法の確立を目指し、電子顕微鏡局所計測技術を飛躍的に高分解能・高精度・定量化することを目指す。また、計算機シミュレーション等の理論的なアプローチと融合することにより、機能元素の機能発現に関する定量的な解釈を行う。
 
イ 複合電子分光による機能元素電子状態解析
 
                 研究代表者   武藤 俊介・名古屋大学・教授
                 研究分担者   吉田 朋子・名古屋大学・准教授
                                        巽 一厳・名古屋大学・助教
 
高エネルギー電子をプローブとして、ナノサイズ格子特異点領域に配置した機能元素における電子状態を定量的に計測・評価そして可視化することにある。そのために、主として(1)軟X線放出スペクトルを波長分散方式で分光するシステム(SXES)を開発すること、(2) 上記システムおよび電子エネルギー損失分光法(EELS)において、ブロッホ波の選択的励起による位置選択的な電子状態分析を実際の化学反応場でその場測定することを目的とし、更にこれらを実際の機能元素の物性解明へと応用する。
 
 表面機能元素の制御と原子構造解析 
                        
     研究代表者  森田 清三・大阪大学・教授
                          研究分担者    阿部 真之・大阪大学・准教授
     西 竜治・大阪大学・准教授
 
表面のナノ機能元素析出を人工的に制御・作成し、原子レベルでの物性評価を行うことで、新研究分野の開拓を行う。具体的には、我々の独自技術である原子間力顕微鏡(AFM)を用いた交換型原子操作によって、特定の原子を一箇所に集めて人工的に元素偏析を起こす。さらに、アトムトラッキング法を用いた高精度・高感度なフォース・スペクトロスコピーで、ナノ機能元素析出中の特定の元素の結合エネルギーや結合距離や化学結合効果の情報を抽出する。また、共通試料における元素操作技術を確立させ、表面局在機能元素の物理を明らかにする。
 
 
研究項目A02 機能元素理論解析 
 
 第一原理熱力学に基づいた機能元素の材料設計   
 
                  研究代表者      田中 功・京都大学・教授
                          研究分担者      寺嶋 孝仁・京都大学・教授
                     大谷 博司・九州工業大学・准教授
                     松永 克志・京都大学・准教授
 
最先端の第一原理熱力学計算手法を駆使し,現実の材料系における機能元素の構造や機能を,与えられた温度,化学ポテンシャル,外部圧力のもとで高精度に計算し、その結果について実証試験を行うとともに、材料設計へフィードバックしうる技術開発を目指す。構築された計算法を用いて、機能元素設計技術へと発展させ、材料開発における体系的な学理・設計基盤として社会に還元する。
 
 マルチスケール手法によるナノ機能元素材料解析   
 
                研究代表者   鶴田 健二・岡山大学・准教授
                研究分担者   尾形 修司・名古屋工業大学・教授
                                       小山 敏幸・(独)物質・材料研究機構・主幹研究員
 
大規模電子状態計算法、古典分子動力学法、粗視化粒子法、Phase-field法を高度化・汎用化させ、さらにそれらを有機的に統合することにより、ナノ領域に局在する機能元素がマクロ物性に及ぼす影響を定量的に予測する新たな計算材料科学パラダイムを構築する。また、領域内の計測班・創成班との緊密な連携研究を通じて共通試料に関する特性解析を推進し、機能元素を含有するナノ構造材料の設計指針の構築および体系化を目指す。
 
 
研究項目A03 機能元素制御に基づく材料創成
 
カ ナノ機能元素制御高機能薄膜材料の創成  
 
                         研究代表者   山本 剛久・東京大学・准教授
                研究分担者   大西 剛 ・東京大学・助教
                     枝川 圭一・東京大学・准教授
                                          杉山 正和・東京大学・准教授
 
転位コアを利用したナノワイヤーデバイスの作製、・粒界に偏析した機能元素を積極的に利用した高温構造用セラミックスの開発、・原子層マニピュレーションによる遷移金属酸化物ヘテロ界面の物性制御法の開発、・複合酸化物薄膜における超高精度化学量論性制御法の開発、および、・高機能性ヘテロ薄膜材の開発、を行う。また、領域内の共通試料について適宜作製提供する。領域研究により構築された機能元素設計指針に基づいた新機能性材料の創出を行う。
 
 機能附活元素の状態制御による高機能材料の創製
 
                  研究代表者    谷口 尚・(独)物質・材料研究機構 グループリーダー 
                研究分担者    平賀 啓二郎・(独)物質・材料研究機構 グループリーダー
                                大橋 直樹・(独)物質・材料研究機構 グループリーダー
                                吉田 英弘・(独)物質・材料研究機構 主任研究員
 
多様な材料合成プロセス(高圧焼結・結晶成長、固―液相焼結、気相合成、イオン打ち込み法)における先端的な材料創製技術を駆使し、機能附活元素のドーピング制御による多機能材料創製を以下の3テーマにより展開する。
(1) 機能附活元素の高圧下ドーピング制御によるワイドギャップ窒化物の特性発現
(2) 機能附活元素設計による多機能酸化物の創製
(3) 機能附活元素がもたらす非平衡性とその緩和による酸化物機能の発現
 
 機能元素修飾による高機能ハイブリッドセラミックスの開発
 

        研究代表者  北岡   諭・(財)ファインセラミックスセンター・主席研究員
                     
研究分担者  和田 匡史・(財)ファインセラミックスセンター・副主任研究員

           松平 恒昭・(財)ファインセラミックスセンター・主席研究員

           佐々木 優吉・(財)ファインセラミックスセンター・主席研究員

           森分 博紀・(財)ファインセラミックスセンター・主任研究員

 
従来の経験に基づいたミクロ/マクロレベルでの材料開発研究とは異なり、原子・分子レベルで材料の化学組成制御が可能な化学的プロセスを利用した液相、固相および気相反応を駆使して、新たなサブナノ領域での機能元素の配置制御と微細構造制御技術の開発を行い、新規機能性材料の創出を目指す。