本研究室では、結晶界面、表面、転位等の局所構造をターゲットとして、その原子・電子レベルの構造と機能発現メカニズムの解明、さらには界面構造を積極的に応用・制御した新規材料設計指針の構築を目指して研究を行っています。以下に代表的な研究テーマを紹介します。
セラミックスは通常多結晶体として用いられており、その特性は材料内部に無数に存在する結晶粒界と密接に関連している。そこで本研究では、セラミックスの機能特性と結晶粒界との相関性を根源的に明らかにし、粒界を高度に制御した新しい材料設計指針の構築を目指している。結晶粒界というサブナノスケールの複雑構造に対するアプローチとして、①バイクリスタルによるモデル粒界の作製及び単一粒界特性評価、②サブÅ分解能を有する超高分解能透過型電子顕微鏡法による粒界原子構造直接観察、③第一原理計算による原子・電子構造理論予測、を軸に研究を進めている。対象とするセラミックス粒界は、Al2O3, ZrO2, SrTiO3, ZnO, TiO2と多岐に渡る。
図左:Al2O3粒界に偏析したY原子を可視化したSTEM像 (J.P. Buban et al. Science 311, 212-215 (2006).
図右:傾角を制御したZrO2粒界のHRTEM像 (N. Shibata et al. Phil. Mag. 84, 2381-2415 (2004).
結晶中の転位は原子スケールの一次元格子欠陥であり、結晶の機械的性質に決定的な役割を果たすことが知られている。当研究室では、このようなユニークな構造を持つ転位に着目し、転位を利用したナノ細線デバイスの開発を目指した研究を行っている。具体的には、転位を原子スケールの鋳型として利用し、そこに異種元素を選択的にドープすることによって、結晶中にナノ細線を導入する技術の開発を目指す。現在、主にサファイアをモデルとした研究を進めている。
図左:サファイア転位コア構造の超高分解能STEM像(N. Shibata et al. Science 316, 82-85 (2007).
図右:転位ナノワイヤーの高電気伝導特性(A. Nakamura et al. Nature Materials 2, 453-456(2003).
金属と酸化物の複合材料は固体酸化物燃料電池,電子実装材料,触媒などの先端技術に重要な役割を果たしており、その材料物性は「金属結合」と「イオン結合」という異なる結合状態を有する物質間の界面(異相界面)に強く依存する。 本研究室では金属/酸化物異相界面に起因した機能がどのようなメカニズムで発現しているかを解明するために、高分解能電子顕微鏡観察と第一原理計算を組み合わせた異相界面の原子・電子構造解析を行っている。
図 Cu/Al2O3界面の(左)高分解能TEM像及び(右)化学結合マップ.
T. Mizoguchi et al. Phys. Rev. B 74, (2006) 235408-1-10.
K. Matsunaga et al. Phys. Rev. B.74 (2006) 125423-1-8.
sub-Å (0.01nm)オーダーの空間分解能を有する走査型TEM(STEM)を用いて電子線エネルギー損失分光スペクトル(EELS)を測定することで単一原子カラムごとの原子・電子構造分析が可能になる。本研究室ではそのような「究極の分析」を用い,粒界,転位,異相界面における機能発現メカニズムを明らかにする研究を行っている。
図左:STEM-EELS法の概略図.
図右:SrTiO3/Nb-SrTiO3超格子のSTEM-EELS分析結果
(H. Ohta et al. Nature Materials 6, 129-134(2007), T. Mizoguchi et al. Phys. Rev. B. 77,24504-1-5(2008)).